小平町のアオバト
皆さん、こんにちは。umeです。
今日は美しい羽根と不思議な鳴き声、そして奇妙な習性を持つアオバトのお話です。
緑なのにアオバト?
頭から胸にかけてはオリーブイエロー、背中から翼はオリーブグリーン。腹から脚は白。
このグラデーションが見事で、一度見たら忘れられない鮮やかな姿をしています。
カラフルなのはボディだけではありません。くちばしは水色なんです。
また、オスの翼の付け根はぶどう色をしています。
しかし、南国の鳥のようなどぎつさはなく、上品な色味です。
漢字では「緑鳩」と書きます。「青リンゴ」「青信号」と同じように、日本古来の色表現からきています。
つい真似をしたくなる鳴き声
北海道では、アオバトは夏鳥です。
初夏になると「アーオー、オーアーオー」と森の中から良く通る声が聞こえてきます。
初めて支笏湖でアオバトの鳴き声を聞いたとき、鳥かどうかも分かりませんでした。
猿みたいだと思いましたが、北海道に野生のサルはいません。
しばらく正体が分からずにいたのですが、google先生は優秀ですね。「オーアーオーと鳴く鳥」で検索してみたところ、「アオバト」の雄の繁殖期の声だと判明したのでした。
アオバトに会いに行こう
普段、森の奥深くで生活するアオバトは観察難易度の高い鳥です。
しかし、アオバトの中には、海水を飲みに森から出てくる個体がいます。
海水を飲む理由は、食べ物では補えない塩分やミネラルを摂取するため、と言われています。
北海道では小樽市張碓(はりうす)が有名ですが、今回は道北の小平(おびら)町へ行くことにしました。
朝4時半に札幌を出発し、オロロンラインをひたすら北上します。
観察スポットに到着したのは7時少し前でした。
運転手のnaoが仮眠を取っている間、私は双眼鏡を手に、目を付けた岩礁へアオバトが降り立つのを待ちます。
強風の日本海はひどく荒れていて、砕けた波が白く泡立っています。
岩礁の上にも容赦なく波が襲いかかります。波と波の間隔は短く、とても岩礁に留まる時間などないように思えます。
こんな状況の悪いときに、はたしてアオバトは現れるのでしょうか…。
偵察隊
待つこと1時間余り。
ツバメのような数羽の鳥が、崖の上から飛び出してきました。
道路や海の上をかすめては、すぐに崖の向こう側へ去っていきます。
周りに天敵がいないか確認する偵察行動のようです。
何度か観察するうちに、アオバトであると確信しました。
とても用心深い鳥です。今は車の中から見ていますが、外に出たら逃げてしまうのでは、と心配になりました。
決死の水飲み
そして、ついにその時が来ました。
アオバトの群れが、岩礁に降り立ったのです。
打ち寄せる波をかわしながら、ほんの数秒のうちに岩のヘコミに溜まった海水を飲み、また飛び立ちます。
見ているこちらがハラハラドキドキしてしまって、気が付くと「がんばれ!がんばれ!」と二人で声を出していました。
飛び立ったアオバトたちは、崖の向こうへと姿を消し、数分後にまた戻ってきます。
手前が雌、奥が雄です |
彼らは、荒れ狂う波を恐れているようには見えませんでした。
彼らが恐れているのは、天敵であるハヤブサです。
さえぎるものがない海の上、濡れて不安定な岩礁の足場で、ハヤブサに襲われたらひとたまりもありません。
そのため、海水を飲んだらすぐに身を隠すのです。
そしてハヤブサがやってきた
20分ほど経過した頃。
アオバトがぱったりと姿を見せなくなりました。
私たちが近付きすぎたせいで、警戒されてしまったのでしょうか…?
アオバトたちが去った崖の上を、一羽の鳥がスーッと通り過ぎていきます。
「あれは、何だろう?」
naoがカメラを構えます。
…? |
ハヤブサだ!! |
ハヤブサがやってきた以上、しばらくアオバトは現れないと思われたので、私たちは帰途につきました。
さようなら。また来年!
それにしても、アオバトの危険察知能力の高さには驚かされました。
どのように群れを統率しているのでしょう?
私たちの見えないところで、見張り役がいたのでしょうか?
支笏湖のアオバトはどこで塩分やミネラルを摂取しているのかも気になるところです。
苫小牧の方まで飛んでいくのか…それとも支笏湖には温泉があるので、支笏湖の周囲でまかなっているのでしょうか?
興味は尽きません。
彼らはもうすぐ、北海道を去ります。
暖かい地方で冬を越して、また来年、あの不思議な鳴き声で私たちを楽しませてくれることでしょう。