『そもそも島に進化あり』/川上和人

2018/03/14

『そもそも島に進化あり』/川上和人




「池の水ぜんぶ抜く」というバラエティ番組が人気ですね。

私も遅ればせながら、先日初めて拝見しました。



ポンプで水を吸い上げ、場合によっては底に溜まったヘドロを掻き出し、池の生物を「外来種」と「在来種」に分けて、在来種のみ戻す。

街の人がロケに1,000人規模で集まっていて、番組の人気を物語っているなぁと思いました。

参加者の中には、子どもたちも沢山います。

外来種・在来種という言葉を、この番組で覚えた子も多いのではないでしょうか。

バラエティ番組を通じて、身近な所から環境問題に関心を持ってもらえるなら、どんどん池の水を抜いていただきたいです。



ところで番組では、「外来種」は凶暴・獰猛で、在来種を絶滅に追い込む「ワルモノ」として扱います。

悪い外来種をやっつけて、か弱い在来種を助けるという、シンプルな勧善懲悪の図式が、子どもたちには受けるんでしょうね。


私も長年、外来種は悪の権化くらいに思っていました。でも今日ご紹介するこの本から、「はたしてそんな単純なことでいいのかな…」と考えるきっかけをもらいました。


『そもそも島に進化あり』

著者は鳥類学者の川上和人さん。

学者さんの書いた本って、難しそうな感じしません?

この本の前に、『われわれはなぜ死ぬのか』という、リケジョの元祖みたいな人が書いた本を読んだんですけど、いやはや、難しかったです。

アプローチがミクロすぎるのと、専門用語が多すぎて、全体像を把握できずに終わりました。

↓一応貼っておくけれどオススメはしません(^◇^;)



私は文系人間にも関わらず、たまに科学分野の本に手を出して撃沈します。



しかし川上さんの書く文章は、一味違いました。

『はじめに』だけでも読んでほしい。のっけから読者を笑わしにかかります。

というか、徹頭徹尾ふざけています。

まじめな話1割、冗談7割、妄想2割、くらいのアンバイです。

世代によってはついていけないジョーク(ガンダムネタとか)が満載。私はウルトラマンの怪獣ネタが「??」でした。

でもご安心ください。本文の下に備考欄が設けられていて、ほぼすべてのネタが解説(!)されています(笑)

本来なら、学術用語などを解説するために使うんでしょうけどね。備考欄も、やっぱり割合としてはジョークの方が多いです。


そんな面白おかしい文章が持ち味の本書。

私が日頃疑問に思っていた、海鳥の生態(どうして地面に適当に卵を産むのか、など)を解き明かしてくれました。




本の概要


島とは何か、という定義づけから始まり、メインランドから島へ生物がどのようにして渡り、定着するのか、定着した生物がどのように進化していくのか、語られていきます。

中盤以降は島の生態系を脅かす諸々の要因と、生物がどのように絶滅に追い込まれていくのか。最後に島を研究することの意義、鳥類学者としての壮大な夢(第5章の『天地開闢』はメッチャ面白いです)について綴られます。

しかしながら、とある生物の存在をかなり無理やり無視して、意図的に触れずに話を進めるので、居心地の悪さを感じずにはいられません。奥歯にものがはさまった言い方が続き、「おいおい、アイツのことはいいのか??」と焦らされます。

第4章で、その生物が登場すると、島の生態系は破滅へと追い込まれていきます。




外来種=悪者か?


「池の水ぜんぶ抜く」の話に戻ります。どうしてテレビに出てくる外来種は、あんなに強そうなんでしょうね?

ブルーギル、ブラックバス、アメリカザリガニなど、思いつく奴らは皆、在来種を駆逐して、自分たちだけ繁栄しているように見えます。

しかし、島にたどり着いた生物全てが適応できたわけではないのと同様に、外来種=悪者ではなくて、定着する前に一段階、ふるいにかけられているんじゃないかと思うんです。

つまり、今私たちの目にとまる外来種は、日本の環境に適応し生き残った、いわば生存競争の勝者なのではないかと。

彼らのメインランドにいた天敵は、日本にはいない、又は少ないため、一度定着すると爆発的に増えるのではないでしょうか。

外来種にも弱っちい奴はいて、そういう種は人間に目をつけられる前に、ひっそりと絶滅していく。


それに、日本の在来種が特別か弱いわけでもありません。

英国ではシーボルトが日本から持ち込んだ虎杖(イタドリ)によって、植生どころか、人間の生活までも脅かされる事態となっています。

欧州初!雑草の生物的防除資材として植食性昆虫を導入

(九州大学大学院農学研究院 資源生物科学部門 農業生物科学講座)

天敵がいないとノビノビ育ってしまうみたいです。ただでさえ背の高い草なのに、英国ではさらに1mも大きくなっている模様。



従来の生態系に影響を及ぼすほど、力強い生命力

外来種はワルモノかもしれないけれど、同じ生きものとしてほんの少し、憧れる気持ちがあったりします。




おまけ・天売猫のおはなし



皆さんは、天売島の猫問題をご存じでしょうか?

人間の持ち込んだネコが野生化して、ウトウやケイマフリといった海鳥を捕食、個体数を激減させた事案です。

北海道民にとって、もっとも身近な外来種問題かもしれません。

鳥やヒナがいたら、そりゃネコは食べますよね。ネズミ退治のために連れてこられたのかもしれないですけど、そもそもネズミも人間(船)にくっついて来たんじゃないのか…と。陸生ほ乳類は、海を渡れませんから…。



天売島ではネコの避妊手術をして島外へ連れ出し、人に慣れさせ、「天売猫」として譲渡する取組みを行っています。

今回、タイムリーに北海道新聞で記事になっていましたので、ご紹介^^


旭山動物園で馴化された天売猫


<記事のつづき>
 「海鳥の楽園」と呼ばれる天売島では、野良猫が絶滅危惧種のウミスズメやウトウなどを襲うことが問題となり、同町と環境省、道などでつくる「人と海鳥と猫が共生する天売島連絡協議会」が14年秋から猫の捕獲事業を始めた。
 捕獲した猫は不妊・去勢手術を施した上で、人に慣れさせるための1次飼育を行い、飼い主を探す。殺処分せずに島から猫を減らすのが狙いで、同協議会はこれまで130匹を捕獲し、110匹を譲渡してきた。
 その結果、ピーク時に200〜300匹とされた天売の野良猫は激減。同省自然保護官の竹中康進(やすのり)さん(40)は「島の猫はいま10匹ほど。野良猫が多くいたころなら考えられない千羽以上のウミネコのコロニー(集団繁殖地)も市街地に確認できた」と取り組みの成果を喜んでいる。

<北海道新聞WEB版 2018年03月08日10時57分>



外来種は捕獲して殺処分、が一番手間もお金もかからないです。

その真逆を行く「天売猫」の取り組みは、「人間まだまだ捨てたもんじゃないな!」と、勇気をもらえます。

11日の譲渡会で、チロルとひじきの新しい飼い主さんは見つかったんでしょうか?旭山動物園のブログはまだ更新されていません。気になる~。



旭山動物園blogより。左がチロル、右がひじき。
…いい面構えだ!


「天売猫」のこと、心のどこかに留めておいていただけると、嬉しいです♪




<2018.5月追記 チロルは新しいお家が見つかりました!>

よかったね!チロル♪




川上さんの本は、他にも読んでみたいものがあります。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』←すごいタイトルでしょう。


札幌市図書館の予約数、117!


めちゃくちゃ人気ありますね!いつになったら借りられるかな??気長に待ちます^^




6 件のコメント :

  1. へぇぇ 面白そう、私も読んでみよっと。
    と、図書館を検索したところ、こちらも『鳥類学者・・・』予約数84件と人気でした(^^*) 
    『そもそも・・・』の方は9件だったので、先にこっちを読めると思います。楽しみです!

    天売猫、初めて知りました。慣れるまで2年半以上かかるんですね。そりゃ殺処分の方が効率的だと思う人がほとんどでしょうね。関係者の方の勇気、すごいと思います。よいご縁が結ばれますように(=^_^=)

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    1. >うまんまさん
      『鳥類学者・・・』はタイトルの付け方が上手いですよね。
      川上先生のボケ倒し、人によってはウザいと感じるかもしれませんが、「まじめ一割」の部分だけでも読んでいただければ^^

      天売猫は、猫好きにとって大変喜ばしい取り組みで、ぜひとも紹介したかったのです。
      羽幌町の「北海道海鳥センター(http://www.seabird-center.jp/)」には、天売出身の猫館長「テン」ちゃんがいるんです。いつか会いに行きたいと思っています^^

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  2. 天売猫って童話とかに出てきそうな良い名前ですけどね~(*^_^*)
    こっちで外来種ですぐ連想するのはマングース防除問題ですね。
    天売猫もマングースも人間の都合でそこに生息することになったのに、張本人である人間の“かたの付け方”が異なるので、原則殺処分のマングースに少し同情したくなります(^_^;)
    全然関係ないけど、球団本拠地の話も外来種問題としてなぞってみたら面白いです(笑)

    最近はとくに老眼が進んでいて、老眼鏡での読書ってすぐ眠くなってしまうためあまり本を読まなくなったんですが、ご紹介いただいたこの著者の本は面白そうなのでとりあえずウィッシュリストに入れました(*^_^*)

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    1. >ぷしゅ猫さん
      ブランド化じゃないけど「天売猫」と名前を付けることで、問題の周知に一役買っていると思います。
      猫と違って、マングースはペットにできないですもんね…。人間の都合で持ち込まれて、役に立たないから殺す、というのはやりきれません。「マングースに罪はない」ことを忘れずに、せめて同じ過ちは繰り返さないようにしたいですね。
      確かに球団の件も「大阪の会社」と目の敵にしている意見、あったなぁ…。北海道は3〜4世代さかのぼれば皆よそ者の集まりですから、出身云々には寛容なはずなんですけど…(^^;

      老眼はやっぱり読書には不向きですか(´∀`;) 私もいつかは…(ノдT) 。本が読めなくなるのはツラいです!

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  3. 確かに、銘柄みたいな名前つけて身近な存在に感じてもらうのは良い作戦だと思います。
    実は小学生の頃羽幌町に住んでいたので、天売焼尻両島は最も身近な島だったんですよ。その頃は港の回りはヒトに餌を貰いたい鳥でいっぱいだったので、猫も飼い猫くらいしかいなかったんでしょうね。
    限定地域の生態系を守るためにマングースの防除費に毎年億単位使うなら、捕獲したのをまとめて生息地に送って離すまでやっても良いんじゃないの?と思います(笑)
    ちなみに私からは3代さかのぼると滋賀県人です。道産子ですが関西人の血が流れてます(^O^)
    北海道には親戚以外にない珍しい名字も滋賀にはふつうにありますしね。
    本は良く買うけど積読が多いので老眼をもっぱらの理由にしています。汗
    視力は両目1.0以上あるんですけどね・・・タブでマンガ読んでも眠いです(^_^;)

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    1. >ぷしゅ猫さん
      羽幌にお住まいでしたか!実は私、天売猫を記事にしておきながら、島に渡ったことがないのです(^_^;

      マングースは個体数が減ってからが正念場ですね。駆除が完了するまで、費用対効果を気にしてはいけない、というか、駆除の手をゆるめたら、今までの努力が水の泡になってしまいますもんね…。マングースって繁殖能力高そう。

      うちは、曽祖父の代に富山から入植したそうです。だいたいみんな、こんな感じですよね!

      視力が1.0あるんですか?うらやましい~~。でも、目がいいと老眼に気づきやすいっていいますね。私は近視が強すぎて、老眼になっても分かりづらいと思われます^^

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