内地の人から見た北海道
宮下奈都さんの『神さまたちの遊ぶ庭』を読みました。
一年間限定で移住した、北海道トムラウシでの生活をまとめたエッセイです。
表紙に登場するのは、エゾリス、ニジマス、エゾクロテン、ミヤマカケス。写真には写っていませんが、キタキツネもいます。ニジマス以外は北海道の固有種です。
トムラウシってどこにあるの?
2009年にトムラウシ山で発生した大規模な遭難事故のことは、忘れられません。
本当にショッキングな事故でした。
この事故をきっかけに「トムラウシ」という地名、山名を知った方も多いでしょう。
航空写真です |
宮下さんの子どもたち(長男:中3、次男:中1、長女:小4)が通った、新得町富村牛小中学校の場所を調べてみました。
右下に見えている新得町、鹿追町が最寄りの市街地です。十勝平野の北端にあたります。
富村牛小中学校は十勝平野から、山へ向かって一本道を20kmほど行ったところにあります。
この道の終点はトムラウシ温泉「国民宿舎東大雪荘」とキャンプ場です。南富良野に抜ける道なのかと思ったら、行き止まりでした。
なんだかものすごい山奥、に見えますが、校舎は意外と立派ですよ。
富村牛小中学校 校舎 |
「北海道の大自然を満喫したい!」という旦那様の希望で、2013年4月に福井から移住した宮下さん一家。
日記形式で、日々の暮らしが綴られていきます。本の中で見つけた「北海道あるある」をどうぞ↓
五月に雪が降る
ゴールデンウィークには雪が積もった。麓の屈足温泉の露天風呂に浸かって、どんどん降ってくる雪を見ていたら、「ああ、もうすぐクリスマスだな」と思った。違う。五月だ。脳が完全に騙されている。
毎年じゃないですけど、割と雪が降るんですよね。GWって。山間部のみならず、平地でも。
GWは北海道のアウトドアシーズンの幕開け。人々は「冬が終わったぞ~!」と勇んで外に繰り出します。
長距離移動や、峠越えをする人は、毎年GWが終わるまでは冬タイヤのままです。
春なのに蝉が鳴く
六月だというのに、蝉が鳴きはじめる。エゾハルゼミ、春の蝉だという。気温は二十度に満たないのに、蝉が鳴いていて混乱する。
これは、札幌市民だとピンとこない人がいるかもしれないです。
というのも、エゾハルセミは森林性のため、平地の市街地でセミの鳴き声を聞くことはほとんどないのです。
札幌でも円山の方にはたくさんいますけどね~。
でも、アブラゼミやクマゼミの五月蠅さとは違うような気がします。
トリカブトが自生している
「宮下さん、それ、さわっちゃだめ」
「えっ」
そうは見えないが、誰かが育てているものだったんだろうか。
「それ、トリカブトだから」
うそっ、トリカブト?ヨモギにそっくりだ。
トリカブトとか大麻とか、アブナイ野草が自生しています。
大麻は毎年行政が駆除していますね。効果は薄いようですが。
昔、父が「これ、トリカブトだよ」と花のついた茎を摘んできたことがありました。
ビニールに入れ、押し花にして大事に取っておいた思い出…。
家の中に生物兵器みたいな蚊がいる
これは北海道あるあるではありませんが、面白かったのでご紹介。
ヌカカというものすごく小さい蚊です。刺されると悶絶級のかゆみに襲われ、刺された部分は芯となり、皮膚は褐色に変色して跡が残る、最強最悪の蚊です。
普通は家の中にはいません。トムラウシが特別かと^^
私は数年前、灯台へ向かう道で足首を三カ所刺されてヒドい目に遭いました。
ヌカカ。名前からして人を油断させるが、調べると、「毎秒1046回羽ばたいている。これはすべての生物の中で最速の羽ばたきである」。
なぜ?なぜにそんなにがんばって羽ばたくのか。人さまの血を吸うためか。羽ばたかんでいいから花の蜜でも吸っていろと言いたい。
カブトムシがほとんどいない
宮下さんの娘さんはカブトムシを愛してやまないのですが、北海道にはクワガタばかりで物足りない、とぼやくお話があります。
残念ながら、カブトムシは北海道の固有種ではありません。
飼育されていた個体か、あるいは故意に持ち込まれたものが野生化して、定着しているようです。
ちなみにクワガタのオスを「おんた」、メスを「めんた」と言います。
雪が降る日は暖かい
福井だと、寒い寒いと言っているうちに雪になるのが常だったが、ここ十勝では、なんだか暖かいなぁと思っていると雪だ。気温がマイナス二十度を下回るようだとたいてい空は晴れている。雪は降らない。
十勝は雪が少ないかわりに、放射冷却現象が頻繁に起こるので、北海道でも特別寒い地域です。
十勝に限らず、雪の日の方が暖かく感じます。
雪雲が地表の空気を逃がさない「フタ」の役割をしてくれるからです。
余談ですが、雪のある1~3月よりも、4月の方が体感温度は低いんですよね。
気温はなかなか上がらないのに、街にはダウンコートを着てはいけないような雰囲気が漂って、薄着せざるを得ない…(^◇^;)
4月になると強風の日が多くなりますし…。
新年会は下の句カルタ
見ると、今までやってきた百人一首とはまるで違う。そうだ、『ちはやふる』で見た「下の句カルタ」だ。(中略)北海道で広く普及している百人一首は、読み手が下の句を読む。取り手は、絵札ではなく下の句が変体仮名で書かれた木板を取る。読み手の節も歌いまわしも一般的な百人一首とは異なっていた。
小学生の時、冬休みに公民館に集まってやってました。
北海道独自の文化だったんですね。
私も由来など全然詳しくないので、「北海道LIKERS」さんの解説を参考にどうぞ。
本の感想
エッセイは、宮下さん家の子供たちの話題が中心です。
個性豊かな三人の子供たちのエピソードは、確かに面白いのですが、少し物足りなさを感じました。それは、楽しかった出来事しか書いていないからです。
書きたくても書けないんだろうなぁ、と推察しました。
集落を実名で、しかもリアルタイムで雑誌に連載していたら、住人は仮名にしたところですぐに分かってしまいますもんね。
誰よりも北海道移住を望んでいた、旦那さんの話がほとんどなかったのも残念。夫婦仲を疑うレベルで登場回数が少ないです。
おまけ
平昌オリンピックでカーリング女子代表「LS北見」が試合中に使う北海道弁「そだねー」が可愛い、と話題になっております。
2018年2月19日付 ライブドアニュースより |
「そだねー」って北海道弁だったのか~。知りませんでした。標準語とまではいかなくても、若者言葉で全国どこでも使うものだと思ってました。
あまり北海道弁という意識がない「そだねー」よりも、「ちょっと
「~(さ)さる」や「~かい?」は日常的に使ってます。
カーリング、面白いですよ!
ルールは何試合か見ていればだいたい分かるし、戦略性を理解するとさらに面白さが増します。
一次リーグ、残るは英国とスイス戦です。全力応援していきます!
…おまけの方が本編みたいになっちゃった^^;
推察されていた『書きたくても書けない』事情、なるほどと思って読んでいました。生活していたら嫌だなって思うことがあるのが普通になのに、それができないって辛いところですね。良いところも悪いところも、読み手としては知りたいところだけど、そこで生活するには波風立てたくないだろうし。。。
返信削除北海道あるあるをもっと知りたくなりました^^
>こころさん
削除そうなんですよ~。エッセイとしては面白いんですけどね。小さなコミュニティならではの苦労話も絶対あるはずなんですよ。
学校生活はすっごく楽しそうでしたけどね~。教師全員、運動会の徒競走で異常に足が速いとか^^
そんな年齢の子供が三人もいるのに、福井から北海道に移住! しかも一年限定!
返信削除というのが一番驚きでした。さすが作家、一般人とは感覚がちがいますね。
ものすごく寒くて晴れてるか、寒さはマシだけど雪か... 究極の選択かも(^^;
>うまんまさん
削除本当に驚きです。しかも旦那さんは北海道に引っ越ししてから就職活動…。帯広で仕事が決まったものの、週2勤務ですよ。私ならキレます(笑)
寒さと雪なら、雪の方がマシかもしれません。
宮下さんは、寒さでコンタクトレンズとまつげが凍ってました。まつげが折れたら、女子は悲惨ですよね(^◇^;)