『異性』/角田光代・穂村弘
『異性』は、角田光代さんと穂村弘さんの共著です。
恋愛に関する男と女の違いを、恋愛適齢期をとうに過ぎたお二方がリレー方式で考察していきます。
うまんまさんにおすすめしていただきました。ありがとうございます!
りんちゃん至上主義!
null
私は、残す人生イベントは「死」だけと言ってはばからない、隠居系女子であります。
普通なら子育てで忙しい世代のはずですが、私の場合はすでに余生感がにじみ出てきております。
余生ですからね、なるべく細く長く、最小出力で、燃費重視でいきたいです。
恋愛というのは、その真逆ですね。
膨大なエネルギーが必要だし、使ったエネルギー(と時間)が回収できるとも限らないわけです。効率が悪すぎます。
やっぱり恋愛は若者の特権ですよ。
10代・20代は、効率なんて考えなくても、無尽蔵に、時には過剰なほどのエネルギーが沸いてくるものです。
若いうちに目いっぱい恋をして、良さそうな相手に出会えたらノリと勢いでさっさと結婚した方がいいと思います。
これから恋愛をする予定のない隠居系女子が、この本を読んでも無意味なのかもしれません。
でも、歳を重ねていくうちに何となく感じていたことが、確信に変わったのと、余生でも活かせそうな真理を得ましたよ^^
愛は幻想だ
高校時代、現国教師がよく言っていた言葉です。
「愛は幻想だ」と言われても、ウブでお子ちゃまな高校生たちは「そんなわけない」と反発しました。
先生は幻想の愛しか手に入れられなかったのかもしれない、でも僕(私)は、いつかきっと本物の愛を知るときが来るのだ、と。
その相手といつまでも幸せに暮らすんだって、信じていましたね。
タイムマシンがあったら、あの頃の私にこの本を持って行って、教えてあげたい。
「先生の言うことは正しい。」…と。
この本を読むと、男女の考え方というのは、もう、本当に、救いようのないほど、全く違うものなのだと分かります。
ズレにズレまくっていると言っても良いです。
なのに、私たちは錯覚する。「短いの似合うって言われた。ってことは長いときも知っていて、それよりかわいくなったと言ってくれている」と勘違いする。「食べるの遅い、だって。ってことは私の食べるところいつも見てるんだ」と思い込む。「その仕事はうけたほうがいいって。私のこと、考えてくれてるんだなあ」と感激する。
「所有もされたい」角田光代
男性側のコメントは、相手の女性の全体性を視野に入れたものじゃないと思います。もっと一方的な所有感覚に基づく「俺的」見解でしょう。やはり男女間で感覚的なズレがあるみたいですね。でも、そのズレが「錯覚」を生み出して、恋に発展することがあるなら、それなりの意味があるってことなのか。
「ズレと吸収」穂村弘
穂村さんのおっしゃる「一方的な所有感覚」は、ここだけの引用だとちょっと分かりづらいかもしれませんが、男性の考え方の根幹みたいなものです。本書を読んでいただくのが一番かと思います。
下心と打算と錯覚と思い込みとが複雑に交錯して、ズレていたはずの男女がうまい具合にハマると、メデタク恋愛関係が成立するわけです。共犯関係と言って良いかもしれません。そこに愛が介入する必要はありません。
これを不幸ととらえるか、そういうものだと受け入れるか。
前者だと思う人は、まだまだ恋愛体力が残っている人です。私はもちろん後者ですが。
タイムマシンがあったら、恋に悩んでいた若かりし頃の私に教えてあげたい。
「愛が幻想でもいいじゃない。同じ幻想を共有してくれる相手を探せばいいだけ。」…と。
愛がなくたって、相手のことが理解できなくたって、そういうものだと割り切れば良いのです。
そのかわり、相手にも自分を100%理解してほしい、と要求しないことが大事です。
…私って醒めすぎですかね??ちょっと心配になってきた^^
たとえばすごく綺麗な夕日を見たときに、「綺麗だなぁ」という気持ちを共有できたら、それで幸せな気がします。………あ、急にロマンチストみたいになっちゃった。
夕日を見て「綺麗だね」と言ったら、「西日がすごいね」と返してくる人とは上手くいかないだろうなぁ。ということです。極端な例ですが。
まとめ
穂村さんの分析力が光る本でした。最終章の「長編劇画と四コマ漫画」は秀逸です。
角田さんは女性だからか、やっぱりどこか自分の恋愛談を恥ずかしがっている、さらけ出し切れてない感じがありましたね。
「あるある~」って共感したり、「なるほどね~」と納得したり。
私のように恋愛から遠ざかった人間でも楽しんで読める本でした^^
|
0 コメント :